
A君、ハガキに記載されていた管轄の年金事務所に電話しました。
確認の結果、やはり追納の最小単位は1か月分。払える金額での分割払いはできないとのことでした。
気になっていた空欄の謎
おばちゃんがずっと気になっていたことがありました。
A君のハガキに記載されていた期間のうち、令和7年4月~6月が空欄、7月~9月が「セ(納付猶予)」になっていたこと。
A君は新卒で前職の会社に入社しました。
その会社の採用ページには「社会保険完備」と記載されています。
入社して数日後に保険証が渡され、一度も使わないまま、令和7年9月に退職したときに返却したそうです。
会社の保険証をもらって、返した。それなら厚生年金にも入っていたはずです。
健康保険と厚生年金は、同じ用紙で一緒に手続きするものだからです。
でも「セ(納付猶予)」は、国民年金を自分で払う人(第1号被保険者)だけの記号です。会社員なら、そもそも付きません。
──ここが、おばちゃんの引っかかったところでした。
年金事務所で確認してもらったところ、A君は前職の期間、厚生年金に入っていませんでした。
となると、あの保険証は会社の健康保険証ではなかったのかもしれません。
国民健康保険なのか、国保組合のものだったのか、そこまでは分かりません。
そして、もうひとつ分からないことがあります。
給与から社会保険料が天引きされていたのかどうかです。
A君は給与明細を残していないので、確かめようがありません。
天引きされていなかったのなら
… 会社が加入の手続きをしていなかった、という話
天引きされていたのに納められていなかったのなら
… まったく別の、はるかに重い話
A君の場合はどちらだったのか、いまとなっては分かりません。
令和7年4月~6月の空欄は、どうなるの
免除や納付猶予の「年度」は、7月から翌年6月までの区切りです。
保険料の金額が変わる年度(4月~3月)とは、ずれています。
だからA君の「セ」は7月から始まっていて、その手前の4月~6月は申請していなかったので空欄ということらしいです。
空欄は、何の承認も受けていない「未納」です。
納付期限から2年で時効になります。加算額はつきませんが、2年を過ぎたら、もう払えません。
でも、納付猶予はあとからさかのぼって申請できます。
申請できるのは、納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)です。
くわしくは日本年金機構「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」のページに載っています。
令和7年4月分の納付期限は、令和7年5月末。
つまり令和9年の5月ごろまでは、まだ間に合う計算になります。
さかのぼって承認されれば、この3か月は「2年で消える未納」から「10年間払える追納」に変わります。
A君にとっては、そのほうがずっといい。
給与明細、見てた?

給与明細の控除欄、ちゃんと見てた?

ほぼ手取り額しか見ていませんでした……
給与明細は会社のシステムから確認・ダウンロードできたけれど、必要ないと思ってダウンロードしていなかったそうです。
奨学金という足かせがある状態で、年金の学生納付特例の追納。
それだけでも大変なのに、前職にいた期間の分まで出てきました。
おばちゃん、驚いたというより……悲しくなりました。
その会社のホームページには「社会保険完備」。
給与明細が教えてくれること
A君の話を聞いて、改めて思いました。
給与明細は、会社があなたとの約束を守っているかを確認できる唯一の書類です。
| 確認すべき項目 | 意味 |
| 健康保険 | 病気やケガのときの保険に加入しているか |
| 厚生年金保険 | 年金に加入しているか |
| 雇用保険 | 失業したときの保険に加入しているか |
控除欄に健康保険・厚生年金・雇用保険の記載がなければ、社会保険に加入できていない可能性があります。
記載があれば安心かというと、そうとも限りません。
給与から天引きされていたのに、会社が届出も納付もしていなかった。
そういうことが実際に起きたため、あとから年金記録を直すための法律(厚生年金特例法)まで作られています。
確実に確かめる方法は、ひとつです。ねんきんネットです。
厚生年金の加入記録が、月単位で見られます。
給与明細が手元になくても確認できます。
登録がまだなら、年に1回届く「ねんきん定期便」でも確認できます。
ねんきんネットの登録や使い方は、日本年金機構「ねんきんネット」のページで確認できます。
もし記録が抜けていたら、まずはお近くの年金事務所へ。
記録の訂正を求める手続きも用意されていて、こちらに期限はありません。
手取り額だけでなく、控除欄も必ず確認してください。
そして給与明細は必ずダウンロードして保存しておきましょう。
退職後はシステムにアクセスできなくなることがほとんどです。
社会保険の加入義務については会社に確認するか、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。
※2026年8月時点の制度です。
◆おばちゃんからひとこと
A君は何も悪くない。
入社したての頃、給与明細の見方なんて誰も教えてくれませんでした。
でも、知っていれば防げたかもしれない。
それがとても悔しい。
「社会保険完備」と書いてある会社に入ったから大丈夫、ではなく。
入社したら、給与明細の控除欄を必ず確認する。
これだけで、A君のような状況を防げる可能性があります。
給与明細は捨てないで。ダウンロードして、保存しておいてください。
A君、大変だけど一緒に乗り越えよう。おばちゃんは応援しています。
この学生納付特例の質問から始まった年金にまつわるはなしは、A君了承のうえ公開しています。

